リスクオンのようでリスクオフ





KEY TAKEAWAYS
  • 金の価格が大きく下落継続。
  • ドル指数は上昇継続
  • 中小株の指数が少し下がっているので少し警戒。
  • FOMC議事録は特にサプライズなし。


みなさん、こんにちは!

7月6日の米国マーケットの振り返りをしながら、経済データとチャート分析をお届けします。


FOMC(※1)議事録が公開されましたが、特にサプライズはありませんでした。インフレーション指数が2%に戻るまで金融引き締めを頑なに継続するスタンスが明らかになっています。Q2のGDPがポジティブになっていることや、家計や雇用環境の底堅さが語られていて、利上げを怯む理由はどこにも無いといったメッセージが込められているように見えます。

次回も0.5〜0.75%の利上げを予定していて、バランスシートの縮小(流通通貨量の削減)も予定どおり継続することが話されています。GDPNow(※2)がマイナスを示してリセッションの可能性が上がっていることから、マーケットは中央銀行のスタンスが緩むことを期待しているように見えますが、家計も雇用環境も底堅いと繰り返しているところを見ると、その期待は儚く消えるかもしれません。

NBERというリセッション(※3)を宣言する機関が判定をする際に、GDPが二四半期連続でマイナスになることは条件ではないため、仮にGDPが二四半期連続でマイナスになったとしても、他の判断基準からリセッションと宣言されず、中央銀行の厳しいスタンスが継続するシナリオがあり得ます。

おそらく、このミックスした状況がリスクオン(グロース株が買われている)のようでリスクオフ(国債や米ドルや日本円など安全資産が買われ、新興国通貨のようなリスクの高い資産が売られている)の状態を作っているような気がします。


ということで、個別にチャートを見ていきましょう!

1.  FOMCは、Federal Open Market Committeeの略で、米国中央銀行の金融政策決定会合のような位置付けのものです。この会議で政策金利が決定され、QE(金融緩和)やQT(金融引締め)の計画内容と進行状況が話されます。議事録には公表されていない将来の施策や、現在のマーケットの展望などが含まれるため世界の投資機関が注目しています。
2. GDPNowは、米国中央銀行アトランタ支局が提供するレポートで、日々の経済データを元に現在の四半期のGDP推測値を算出するものです。正式な予測値ではありませんが、向かっている方向を探る手掛かりになっています。
3. リセッションは、景気後退を指し、正式な定義では2四半期連続でGDPがマイナス成長の状態を指します。主な原因はインフレーションを抑制するための中央銀行の政策金利の引き上げが急激なことにより起こることが多いようです。リセッションになると小さな企業が破綻しやすくなり、失業率が加速的に上昇しはじめます。



 



世界の株式マーケットの方向性を決める世界最大のマーケット(※4)である米国マーケットを分析することで、日本の株式マーケットや為替(FX)マーケットの背景で動くマクロトレンド(※5)のインサイトを見つけることができればと思っています。

2. 株式マーケットが運用されている世界の上位100か国の中で最もマーケットの時価総額が大きいのが米国で、全体の40%を占めています。上位5社ほどが日本の株式マーケット全体に相当する大きさです。
3. マクロトレンドとは、株価が上昇したり下降したりするトレンドの背景にあるファンダメンタルな要因がつくる大きな流れです。例えば、通貨の供給量を増やすことが株式マーケットの時価総額を成長させる背景にあるといったものです。

Table of Contents




 

直近の主な経済データについて

この1週間は以下の経済データが公表されました。

米国 FOMC議事録公開 1.35% (専門家予測 1.35%、前回 0.85%)
  • 特にサプライズの無い内容。
  • 次回も0.5〜0.75%の大きめの利上げを検討。
  • Q2のReal GDPはポジティブの数値を示している。(ミーティング時点)
  • 家計の底堅さ、雇用環境の底堅さに繰り返し言及。(利上げに弱気な姿勢皆無)
  • 需要と供給のアンバランスがインフレーションを起こしていることへの言及回数が多い。
  • バランスシート縮小は予定通り継続。
  • メンバー全員がインフレーション指数を2%に下げることに全力を尽くすスタンス。


日本時間の早朝にFOMCの議事録が公開され、内容は特にサプライズの無いものでした。いままでの発言どおり、インフレーション指数が2%に戻るまで頑なに金融引き締めを継続していくという主旨になっています。

次回7月27日のFOMCでの利上げ幅は0.5%の可能性もあるため、現在マーケットが9割がた織り込んでいる0.75%より低いので、そこは少し乖離が出るかもしれません。とはいえ、0.5%でも相当厳しいスタンスには変わりないので、ぐんぐん株価を押し上げる要因にはならない気がします。

今晩は失業保険申請数やGDPNowのアップデート、明日は失業率のアップデートがあるので、慎重な雰囲気が続くように思います。



今週の主な経済データ
7月7日 米国 ADP非上場企業雇用統計(専門家予測 180〜200K、前回128K)
7月7日 米国 失業保険申請数(専門家予測 180〜200K、前回128K)
7月7日 米国 GDPNowアップデート(前回-2.1%)
7月8日 米国 雇用統計(専門家予測 270K〜300K、前回390K)※KはThousand=1,000の意。
7月8日 米国 失業率(専門家予測 3.6%、前回3.6%





 

S&P500ボラティリティ指数 VIX(※6)



KEY TAKEAWAYS
  • 先週から同じ位置で止まっているので少し心配。
  • +σ1ラインの上にあるということは、普通より大きく動く可能性を示している。
  • 下のトレンドラインを下に抜けることができれば、もう少し楽観的になりそう。

6. VIX指数はマーケットの下落可能性を測る指標として使われています。数値が高いほど下落可能性が高く、大きくスパイクした後は株価が反発するチャンスがあるとされています。長期間の平均値は19.1あたりになるようです。



 


S&P500指数ETF SPY(※7)



KEY TAKEAWAYS
  • ちょうどフィボナッチ(※8)-61.8%ラインの下で止まっているのは心配


7. S&P500は、世界で一番大きな株式マーケットで米国の時価総額上位500社の価格をトラックしている指数です。
8. フィボナッチとは、フィボナッチリトレースメントの略で、イタリアの数学者レオナルド・フィボナッチが発見したフィボナッチ数の法則性を利用したテクニカル指標です。主にサポート&レジスタンスラインの見極めに使われています。フィボナッチ数列にある任意の数字と前の数字との比率を出すと61.8%になります。チャートの動きも61.8%のラインあたりで方向転換することが多いのが特徴です。




ダウ工業平均指数ETF DIA(※9)




KEY TAKEAWAYS
  • 雇用統計前であまり動かない印象。


9. ダウ工業平均は、DIA(Dow Jones Industrial Average)と呼ばれ米国の株価上位30社の平均価格をトラックする指数です。伝統的な会社やファイナンシャル企業の有名な会社を集めた指数と捉えるのが簡単な解釈です。








NASDAQ100指数ETF QQQ(※10)


KEY TAKEAWAYS
  • 上昇の勢いが弱くなってきているように見える。


10. NASDAQ100は、米国NASDAQに上場している会社のファイナンシャル企業を除く時価総額上位100社の価格をトラックする指数です。大きなテック会社を集めた指数と捉えるのが簡単な解釈です。



RUSSEL2000指数ETF IWM(※11)



KEY TAKEAWAYS
  • 比較的強く動くこのセクターが少し下がっているのは心配。
  • 下降トレンドに戻る可能性。


11. RUSSEL2000は、時価総額上位3000社を集めたRUSSEL3000の下から2000社を集めた指数です。この2000社がRUSSEL3000の時価総額の10%を占めていて、米国経済の健康状態を測る目安とされている指数です。米国の中小企業をいっぱい集めた指数と捉えるのが簡単な解釈です。




 

日本株式ETF EWJ(※12)



KEY TAKEAWAYS
  • トレンドライン、フィボナッチライン、EMA(※13)ラインが重なっているので、レジスタンスラインが強くて上に抜けるのが難しそう


12. EWJは、米国マーケットに上場しているETFで、日本株式の時価総額の上位263社を保有しています。
13. EMAは、Exponential Moving Averageの略で、指定した数のローソク足の平均値を直近の数値に重み付けしてラインで表示しているものです。値動きの上限や下限になることが多いため、チャート分析でよく使われています。長い期間の平均値と重なりやすいように、画像の中では10EMA(イエロー)、50EMA(オレンジ)、200EMA(レッド)を表示しています。





 


ビットコイン米ドルレート BTC/USD



KEY TAKEAWAYS
  • チャネルラインの中では下がる余地が残っている。
  • 下降トレンドラインにあたるともう一段下がる可能性。
  • ボリンジャーバンド(※14)が急速に縮んでいるので、次の動きが大きくなる可能性を示している。
14. ボリンジャーバンドは、チャート分析に使われるテクニカル指標のひとつで、移動平均と標準偏差の組み合わせで構成されています。指定期間の標準偏差を用いて値動きの可能性をラインで表示し、移動平均を挟んで上下に帯のように表示されます。変動可能性が大きい時は幅が広がり、小さい時は狭くなります。狭くなった後は次に大きく動く可能性が高くなります。





 

原油ETF USO


KEY TAKEAWAYS
  • 下がる勢いがとても強い。
  • 200EMAラインで少し反発する可能性が高い。



 


ゴールドETF GLD




KEY TAKEAWAYS
  • 2022年の重要なサポートライン(※15)をブレイクダウン。
  • ボリンジャーバンドσ3ラインに沿って下がっているので、下がる勢いがかなり強い。

15. サポート&レジスタンスラインは、値動きの波が跳ね返りやすい価格で引いた水平線です。過去の値動きで山や谷になっているところと重なることが多く、逆方向の指し値注文が入りやすいところと見られます。








 

 


米ドル指数 DXY(※16)


KEY TAKEAWAYS
  • ユーロが安い影響で急上昇。
  • 金利差と安全資産ニーズの両方でドル指数が上昇している。

16. DXYは、米ドルと他の主要通貨との価格のバランスを表した指数です。他の通貨は、ユーロ(57.6%)、日本円(13.6%)、イギリスポンド(11.9%)、カナダドル(9.1%)、スウェーデンクローナ(4.2%)、スイスフラン(3.6%)の6つです。




 


ユーロ&米ドル EUR/USD 



KEY TAKEAWAYS
  • 米国もユーロも今月利上げが予定されているが、米国の方が利上げ幅が大きい予測なので米ドルの方が強そう。







 


米ドル&日本円 USD/JPY


KEY TAKEAWAYS
  • どちらも安全資産として強いので、あまり動いていない。
  • まだ上昇トレンドを維持している。






 

米国10年国債利回り



KEY TAKEAWAYS
  • 安全資産ニーズで国債がよく買われている。
  • 米ドルも安全資産ニーズで買われているので、ドル指数はむしろ上がっている。

  • 米国10年国債の利回りの変動をチャートにしたもの。
  • 政策金利と連動することが多い。
  • 上がると米ドルが強くなり、下がると米ドルが弱くなる傾向。



 


米国10年国債&日本10年国債利回りスプレッド



KEY TAKEAWAYS
  • 米国10年国債が買われていることで金利差が縮まっているが、安全資産ニーズがありドル円はあまり動いていない。
  • 米国10年国債の利回りと日本10年国債の利回りの差をチャートにしたもの。
  • 下がると円安、上がると円高の傾向。






 

 

 





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為替マーケット(FX)のトレンドを見るためのツールです。主要な通貨の値上がり/値下がりの傾向をトレンドラインにして見ることができます。トレードの参考にご覧ください。



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マーケットのセンチメントをはかるためのツールです。リスクオンなのかリスクオフなのかを見るために、米国のETFの日次の値動きと週次の値動きと取引ボリュームをバブルチャートにしています。



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